私たちの好きな第28条 
       
      「世界人権宣言」第28条 
 
すべての人には、この宣言に述べられている権利と自由を完全に実現することのできる社会的・国際的な秩序への権利が与えられています。 
 
      UNIVERSAL DECLARATION OF HUMAN RIGHTS : Article28 Everyone is entitled to a social and international order in which the rights and freedoms set forth in this Declaration can fully realized. 
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            (1)人として正義に関する普遍的宣言 
 
「世界人権宣言」と一般的に私達が呼んでいる「宣言」の原文を見てみますと、いくつかのことにあらためて気づかされます。 
 例えば、「世界」としている「UNIVERSAL(ユニバーサル)」という言葉には、もちろん「万国の」とか「万人の」という意味もありますが、さらに「普遍的」という意味があります。 
 また、「人権」と約されている「HUMAN RIGHTS(ヒューマン・ライツ)」は、「人の正義」あるいは「人間として正しいこと」という意味にも取ることができるようです。 
 つまり、「世界人権宣言」とは、「人としての正義に関する普遍的宣言」という、非常に大きな意味を持っているわけです。 
       「人としての正義」って何だろう。何もないところから考えようとすると、そう簡単に答えのでないむつかしい問題ですね。しかし、すでに答えは用意されているというわけです。それがつまり、世界人権宣言の中でうたわれているひとつひとつの条文なのです。今から50年前の国連で、大変な作業だったろうということは容易に想像できます。しかし一方で、それにさきだつ戦争の悲惨さを経験した人類にとっては、どんなにむつかしくても避けてはならない課題であったにちがいありません。 | 
          
          
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            「権利を言う前に義務を守れ」? 
 
 今日、「人類」が話題にされる時に、いまだに言われる言葉に、「権利を言う前に義務を守れ」というものがあります。「義務を守らない人間には、権利を主張する資格はない」という言葉となることもあります。 
 これは一見もっともな意見のように語られがちですが、よく考えてみると、大変恐ろしい思想を秘めています。つまり、「権利を語る資格のない人間がいる」という思想です。人間の中に、権利を語る資格を持つものと持たないものとがいるという、まさに、人間と人間の間に差別をうみだす思想なのです。 
       これは、人権の思想とは、まったくあい反する考え方です。人権の思想とは、全ての人に、平等に生きていくための権利を語る資格を認めあうことから、すなわち人間として生きる尊厳性を認めあうところから出発するものです。 | 
          
          
            権利を守る義務、そして不断の努力 
 
その意味ではむしろ、すべての人には「権利を主張する(まもる)義務がある」とでも言うべきではないでしょうか。そのことを「世界人権宣言」第28条は私たちに語っているように思われます。そして実は、日本国憲法第12条として、次のような記述があります。 
 「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」 
      人類、そして日本国民が、その歴史の悲しみの中からうみだした、人が人として生きていくための権利は、条文の中に書かれたからそれで万事大丈夫というものではありません。それに関わるすべての人が、日々の生活の中で、人びとの不断の努力によって守っていかなければならない、私たち自身の責任の中にあるものなのです。そしてさらには、その権利が完全に実現した社会を求める権利が、すべての人にあるのだということを、先の二つの条文は私たちに語っています。 | 
          
          
            基幹運動の願い 
 
 教団が基幹運動として進めている同胞運動もまた、親鸞聖人が示された教えを、私たちの暮らしの中で受けとめ生かしていく不断の努力でもあります。その意味では、人類の歴史のひとつの到達点ともいうべき、またその人類の思想の具現化とも言うべき「世界人権宣言」や、その後の「国際人権規約」をはじめとする国際的な諸条約、また近年の「国連人権10年」の取り組みなどへの学びも、今後さらにいっそう深めていきたいものです。 
そして、その中でこそ果たしうる念仏者の責務を、私たち自身の歩みの中から明らかにしていきたいと思います。 
      (基幹運動本部専門委員 斉 藤 真) | 
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